2014年5月29日木曜日

イギリス軍事博物館巡りの旅 コスフォード王室空軍博物館(冷戦館編)

ウォープレーン館に続き、今回は冷戦館です。


冷戦館 外見

通路で繋がっているテストフライト館、ウォープレーン館と異なり、冷戦館は少し離れた所に建っています。テストフライト館、ウォープレーン館はまんま格納庫ヅラした建物でしたが、冷戦館は屋根と壁面が連続面になっている凝った作りになっています。


そんな凝った建物ですが、博物館としては少々難アリです。


冷戦館内部

上の写真を見ても分かるように、複雑な形状から内部容積が小さく、展示機が所狭しと吊られ、並べられています。なかには撮影困難な機体もあり、個人的にこの館の設計はマズった感があります。

また、自然光を取り入れてはいるものの不十分で、採光部からの光と館内の明るさの明闇差が激しく、露出に苦労します。写真撮影には鬼門。垂直に立っている柱も無いので、建物の構造物が写った写真は、ものすごく平衡感覚を狂わされるものもあり、見苦しい写真もありますがご容赦下さい……。


冷戦館展示物

冷戦館はその名が示す通り、冷戦時代の航空機、兵器を展示しています。テストフライト館、ウォープレーン館とはやや趣が異なり、兵器の展示みならず、冷戦とはどのようなものだったのかという冷戦の記憶を伝えるためか、ビデオ展示やパネル展示が多く見られます。

冷戦館に入ってすぐ、核兵器による相互確証破壊(MAD)の説明から入っており、核戦争が現実のものとして感じられた冷戦期の感覚を思い起こさせます。


センチュリオン

英国空軍(RAF)の博物館ですが、冷戦館には陸上兵器もいくつか展示されており、このセンチュリオンも冷戦館入ってすぐの所に展示されています。

センチュリオンは第二次大戦後のイギリス第一世代主力戦車で、英国陸軍による朝鮮戦争の他、インドやイスラエルも配備し、印パ戦争、中東戦争で活躍しています。

ホーカー・シドレー バッカニア

イギリスのジェット艦上攻撃機、ホーカー・シドレー バッカニアの機首部分です。後にホーカー・シドレーに吸収されるブラックバーン社が開発したので、ブラックバーン バッカニアと呼ばれる事も多いですが、ここは説明板の表記に倣いました。

音速に達しない亜音速機ですが、運動性に優れ、レーダーに映りにくい低空飛行に長けた攻撃機でした。1950年代の開発であるものの、1991年の湾岸戦争にも参加しています。

MiG-21PF

旧ソ連で開発されたMiG-21PF戦闘機です。MiG-21は西側のF-4ファントムに相当する世代の機体で、東側諸国で広く配備された戦闘機です。展示されているのはMiG-21で初の全天候能力を備えたPFです。

MiG-15bis

続いても旧ソ連で開発された、戦後第一世代のジェット戦闘機、MiG-15bisです。ドイツからの研究データを元に後退翼を採用し、エンジンにはイギリスから入手したロールス・ロイス ニーンをコピーしたRD-45を搭載しています。

朝鮮戦争時には中国人民志願軍が配備した本機が、米軍が投入したF-86と熾烈な空中戦を展開しました。

展示されている機体は改良型のbisで、エンジンがVK-1に換装される等の改善が施されており、数あるMiG-15のバリエーションの中で最も多く生産された機体です。

ヴィッカース ヴァリアント
宮崎アニメに登場しそうな外見のヴィッカース ヴァリアント爆撃機です。

1955年に配備されたものの、構造上の問題からわずか10年で退役することになります。この頃の英国機は、世界初の実用ジェット旅客機コメットもそうでしたが、構造上の問題が後から発覚するケースが見られます。

ヴァリアント 別角度から
英国機に多く見られる埋込式エンジンも特徴的です。白い塗装も相まって、スマートな印象を与えます。


F-111 アードバーグ
今度は米軍機です。世界初の実用可変翼後退機、F-111です。

F-111はマクナマラ国防長官により、アメリカ空海軍の戦闘機を統合する意図を持って開発されました。統合により開発費、取得コスト、維持コストを下げる狙いだったのですが、機体の大型化を招き、却って高コストな機体となってしまいました。艦上戦闘機型のB型は配備されず、空軍向けのA型も少数配備に留まりました。

F-111 後方から デカい

統合戦闘機としては失敗に終わったF-111ですが、低空侵攻能力、搭載量、航続距離は高い性能を持ち、攻撃機としては極めて優秀な機体でした。「バンカーバスター」として知られる地中貫通爆弾GBU-28を搭載した本機は、湾岸戦争でイラク軍の地下司令部を破壊するなどの目覚ましい戦果を挙げました。

エンジンは抜いてあります

湾岸戦争でF-111の攻撃能力の高さが証明されましたが、高コストな機体である事は変わらず、F-15E系にその役割を譲り退役しました。オーストラリア空軍でも攻撃機として使われていましたが、2010年には全機退役することになりました。

2000年のシドニー五輪閉会式でオーストラリア空軍所属の本機が、閉会式ラストの納火で火が消える際に上空を飛行し、聖火がアテネの方角へ向かっていったような演出を行っています。

アブロ バルカン

続いてはイギリスの爆撃機、アブロ バルカンです。

核攻撃を想定した爆撃機として開発されましたが、核攻撃任務は後に潜水艦発射弾道ミサイルに譲ることとなり、以降は洋上哨戒、通常爆撃任務にも使われました。

バルカン 後ろから
バルカン最初で最後の実戦はフォークランド紛争で、アルゼンチン軍飛行場に対する爆撃でした。この攻撃は成功し、プカラ軽攻撃機等が地上撃破されていますが、基地機能を失わせる程の打撃ではありませんでした。


バルカン 爆弾倉

爆弾倉 パノラマで
バルカン 別角度から

続いては、展示法が微妙感あります。


イングリッシュ・エレクトリック ライトニング

ちょっと分かり難いですが、イングリッシュ・エレクトリック ライトニングです。世界でも稀に見る、エンジン縦列配置の実用ジェット戦闘機です。先日紹介したテストフライト館にも、ライトニング開発過程の実証機がありましたね。

微妙に神々しさがある配置ですが、よく見れません。


続いては航空機ではなく、ミサイルです。


イカラ 対戦ミサイル

オーストラリア海軍の対潜水艦ミサイル、イカラです。

下部に対潜魚雷が埋め込まれており、水上艦から発射後、目標近くで魚雷が切り離され、潜水艦を攻撃します。

現在のUAVめいた趣のある兵器ですが、同様の装備であるアスロックと較べて仰々しく、連射性やコストで劣りそうです。ただし、翼がある分、アスロックより射程距離は長いようです。


アブロ ヨーク

これはレア度が高いと思います。第二次大戦時のイギリスの輸送機、アブロ ヨークです。

この機体はどちらかと言うと、戦後の活躍で知られています。1948年のベルリン封鎖の際、イギリス空軍は本機をベルリンへの輸送作戦に投入し、23万トンの物資を輸送しています。この数字は、ベルリン空輸作戦で輸送された全物資の1割に相当します。また、本機は民間旅客機としても活躍しています。


ハンドレページ ヘイスティングス
ハンドレページ ヘイスティングスは、前述のアブロ ヨークの後継機として開発されたレシプロ4発輸送機です。民間旅客機型はハンドレページ ハーミーズとして知られています。


ショート ベルファスト

ショート ベルファストは、1960年代に開発されたイギリスの4発ターボプロップ大型輸送機です。同じ4発輸送機の米C-130よりも大型で、かつ長距離を飛行できる戦略輸送機として開発されました。


ベルファスト 翼下方から

高性能な輸送機でしたが、防衛費削減を受けて10機しか生産されておらず、貴重な1機です。


スコティッシュアビエーション ツインパイオニア

双発輸送機、スコティッシュアビエーションのツインパイオニアです。

1950年代に開発され、短距離かつ不整地での離着陸性能を備え、軍民双方で活躍しました。


※ハンドレページ ヴィクターを入れるの忘れていたので6/1に追加しました。

ハンドレページ ヴィクターです。


ハンドレページ ヴィクター

1950年代に開発されたヴィクター、バルカン、ヴァリアントの頭文字Vを取って(バルカンだけ日本語表記はこっちが一般的なのでバにしましたが)、これら爆撃機3機種を「3Vボマー」と呼びます。いずれも冷戦初期におけるイギリスの核抑止力を担いましたが、潜水艦発射弾道ミサイルに核戦力が移されるに従い、核攻撃任務から外されました。

ハンドレページ ヴィクター

3Vボマーの中で最後まで残ったのはこのヴィクターでしたが、1960年代には核攻撃任務を解かれ、空中給油等の任務に従事していました。湾岸戦争にも参戦し、1993年に退役しています。


冷戦館で珍しめの航空機はこれが最後で、後は陸上車両を紹介します。


BMP-1

旧ソ連で開発された歩兵戦闘車、BMP-1です。

高い戦闘能力と搭乗歩兵も車内から戦闘できる機能を備えた本車は、戦車に随伴する歩兵を防護し、輸送する事が目的だったそれまでの兵員装甲車両に大きな変化をもたらし、歩兵戦闘車という新たなカテゴリを産み出しました。バトルタクシーとも言う俗称でも呼ばれています。

ベリスコープと銃眼

搭乗する歩兵が戦闘に参加できるよう、ベリスコープと銃眼が兵員室周囲に配され、装甲に守られながらの射撃が可能です。車外が危険な環境となる、毒ガス・核戦争下でも歩兵は戦闘可能な本車は、まさに冷戦時代の申し子のような存在です。

もっとも、銃眼から小銃を撃つ事の有効性への疑問視もあり、近年では銃眼を設けないか、塞いだ歩兵戦闘車も存在します。


軽戦車 スコーピオン

つづいては、イギリスの軽戦車スコーピオンです。

サラディン装甲車の後継として、アルミ合金製の車体に76mm砲を備えた軽戦車で、イギリスを始め各国で使われました。イギリス陸軍での就役期間は長くはありませんでしたが、3,000両以上生産されたベストセラーです。


サラディン6輪装甲車

スコーピオンの前に使われていた、6輪装甲車のサラディンです。

1950年代に開発された本車は、共通シャシーを用いる事で装甲車両の体系を整理することを意図していました。実際、このサラディンを元に、多数の派生型が製作されています。

ちなみに、訪問時にこんな事呟いて結構RTされたのですが、


後から考えてみると、この母親が乗っていた装甲車は、4輪のフェレット装甲車の方だったと思います。Wiki見たら、フェレットは1万ドルくらいで取引されているそうです。普通車並だ。日本でもフェレットのオーナーがいて、許可を取って公道で走らせているようです(下記動画)。




Bv.202
全地形装軌車両Bv.202です。

不整地や雪上での輸送用車両として開発され、後継のBv.206は航空自衛隊にも少数だけ配備されました。

後部車両
地対空ミサイル レイピア発射装置
イギリスの地対空ミサイル、レイピアには発射システムが可搬式から自走式まで様々なモノがありますが、これはイラン向けに開発されたものの、革命でキャンセルされた後にイギリス陸軍で配備される事になった自走式です。

レオパルド1
西ドイツで開発されたレオパルド1です。こちらはいずれ、ボービントン戦車博物館の方で。


冷戦館にはカフェと売店が併設されています。カフェは時間がなかったので利用しませんでしたが、売店では書籍売り場でセール品も販売していました。


セール本 一冊1~3ポンドくらいが相場

重かったですが、セール本を5冊ほど買って3000円くらい。結構得しました。

売り場には正規価格で伊400潜水艦本が売られていて、興味があったのですが止めました。

売り場にあった伊400本

この売場、イギリス人らしいブラックジョークが効いていて、売場直上にレーニン像が売店のバッグ持って宣伝しています(笑)

資本主義の犬 レーニン

いかにも冷戦です。

また、外れには博物館のスポンサー企業の掲示がありました。錚々たる顔ぶれですね。

博物館のスポンサー企業


続きましてはコスフォード博物館のラスト、ハンガー1を紹介します。


つづく


【関連】

イギリス軍事博物館巡りの旅 コスフォード王室空軍博物館(ウォープレーン館編)

前回のテストフライト館からの続き。
今回はウォープレーン館です。実際に戦争で戦った航空機を中心に展示されているスペースです。


テストフライト館の奥からそのままウォープレーン館に抜けると……

ロケット特攻機桜花


うわー……

いきなり日本機と出くわしますが、よりにもよってロケット特攻機"桜花"です。連合国に"BAKA"なんてコードネーム付けられてしまった機体です。


桜花 ロケット噴射口

桜花 後方から

桜花 後方からコックピット

ロケット特攻機とは言いますが、桜花単体での離陸は出来ず、母機の一式陸上攻撃機に搭載され、目標艦船の付近で切り離されます。問題は母機の一式陸攻が発射点に到達する前に、敵直掩機の攻撃を受けて撃墜される事が多々あり、特攻した桜花パイロットの戦死者より、母機の一式陸攻乗員の方が多く亡くなっています。その為、後にジェット化して飛行距離を延伸した型や陸上からカタパルトで発射するも型が計画されています。

他の特攻機と違うのは、特攻専用機として開発・実戦投入された唯一の機体である事も、この機体の異色さを際立たせています。

桜花の前で複雑な顔してたら、通りかかったイギリス人に慰められました……


でも、そんな桜花の隣には傑作機があります。

一〇〇式司令部偵察機

百式司偵こと、日本陸軍の一〇〇式司令部偵察機です。高速性を追求した流線型のデザインは、日本機の中でも優美な印象を与えます。


百式司偵 後方から

本機は司令部偵察(戦略偵察)機という新しいカテゴリの偵察機として開発された九七式司令部偵察機の後継機で、高速性を活かした戦略偵察から、物資輸送、防空戦闘機としても活躍しました。


百式司偵 後方から 偵察窓が大きく取られている

設計と製造は三菱重工業で、偵察機としては異例の1,000機以上も生産されました。高速偵察機を持っていなかった日本海軍でも、本機は使われています。

また、実機前に置いてある説明板に、「ドイツは日本から製造権を取得しようとしたが、不成功に終わった」と書いてあるんですが、それは本当なんでしょうか。


桜花と百式司偵

桜花と百式司偵はウォープレーン館入ってすぐの所に並んでいます。

この他にももう1機、ウォープレーン館には日本機があります。


五式戦闘機

大戦末期に登場した、日本陸軍の五式戦闘機です。他の日本機より少し離れた、アブロ・リンカーンの後ろに展示されています。

三式戦闘機"飛燕"は液冷エンジン供給の問題で、メーカーの川崎航空機の工場に半完成品(エンジンが無い「首なし」機体)に溢れていました。その三式戦の半完成品に空冷の金星エンジンを搭載したのが本機です。

終戦間際に登場したため、連合国からはコードネームを付けられておらず、日本陸軍内でも"隼"や"飛燕"のような愛称は付けられていません。


五式戦闘機 拡大
五式戦闘機

ある意味急造の戦闘機ですが、まっとうに動く1,500馬力級戦闘機という事もあり、部隊やパイロットからの評価は高いもので、人気の高い機体です。

もっとも、五式戦闘機がもっとあっても、すぐに連合軍のもっと強力な新鋭機がゴマンと来るんですが……。

続いては、ドイツの機体を見てみましょう。

FW190A

ドイツの空冷戦闘機、FW190Aです。

大戦中の空冷戦闘機の成功例として知られています。先の五式戦闘機も空冷化にあたり、輸入されたFW190A-5の設計が参考にされています。




ドイツが開発した世界初にして唯一の実用ロケット戦闘機、Me163コメートです。

日本にも設計資料が伝わり、"秋水"として開発されています。


Me163

機首発電機部

機首にプロペラが付いていて、この写真をアップした時に江藤巌先生から、こんな小さなプロペラで飛んでいる、と冗談を言われましたが、正確にはこれは発電のためのプロペラです。

Me163のデータを元に日本で開発された秋水はバッテリーを搭載しているのでプロペラが無いなど、Me163と秋水にはいくつか違いがある点も面白いです。


Me410A-1-U2 
ドイツの双発戦闘機、Me410A-1U2です。

長距離を飛行できて、搭載量も多いと一見魅力的な双発戦闘機。第二次大戦前から世界各国で研究されていましたが、どれもあまりパッとしませんでした。


Me410 別角度から

本機も微妙な位置にあり、連合軍の爆撃機に対する迎撃機(爆撃機駆逐機)として当初は運用されましたが、敵爆撃機が護衛戦闘機を伴っていた場合、迎撃する本機を守る為に単発戦闘機が必要になるなど本末転倒な事態となり、早々に昼間迎撃任務を解かれ、偵察任務等に回されることになりました。

Me410 内部

本機はちょっと過大評価されてないかい? と個人的に思う事ありまして、例えばセガ・サターンの傑作シミュレーション「ADVANCED WORLD WAR 千年帝国」では、強力な対地攻撃力とP-51にも負けない対空能力値が与えられていたと記憶していますが、ちょっとそれは無理があるんじゃないかなあ……と思っています。

続いては珍しい機体です。


Fa330 バッハシュテルツェ
なんと表現したら良いのか、回転翼機とも回転翼凧ともジャイログライダーとも言われていますが……。ドイツの潜水艦で運用された、Fa330バッハシュテルツェです。

無動力の機体を潜水艦で曳航し、風を受けて翼が回転することで揚力を発生させる仕組みの航空機です。潜水艦の偵察能力を拡張するために開発されましたが、連合軍の制空権下で飛行させるのは危険であり、限られた地域での運用に限定されたため、目立った成果は挙げられていません。

珍しい機体なのですが、実機は結構残っていて、コスフォードの他にも様々な所で展示されています。置くだけならコストもかからないので(なにせ維持に手間がかかるエンジンが無い)、引き取り手も多かったんでしょうか。

微妙なドイツ機が続きましたが、次はなかなかの傑作機です。


Fi156 シュトルヒ
多目的に使われた連絡機、Fi156シュトルヒです。

本機は優れた短距離離着陸性能を持ち、連絡から偵察、要人輸送等様々な場面で活躍しました。

本機の活躍で最も著名なのは、幽閉されたイタリア首相ムッソリーニを救出したグラン・サッソ襲撃です。襲撃部隊を幽閉先のホテルがある山頂まで運び、帰路はムッソリーニを乗せて、僅か75メートルの滑走で離陸しています。

なお、艦隊これくしょんにも出てくる三式指揮連絡機は、シュトルヒ(ライセンス生産予定)との競争試作として開発された機体です。


さて、続いてはメイン(?)の英国機です。


アブロ リンカーン爆撃機
アブロ リンカーン爆撃機です。

第二次大戦中にランカスター爆撃機の後継として開発されましたが、完成は大戦には間に合いませんでした。

大戦後期の重爆撃機ということもあり、その巨大さは他の航空機を圧倒します。


リンカーンと五式戦闘機

その大きさたるや、リンカーンの翼の下に五式戦闘機が置いてあるくらいです。

リンカーン 機首

大戦に間に合わなかった本機ですが、マレーシアで発生したマラヤ危機等の旧植民地での軍事作戦に投入されています。


巨大なリンカーンにつづいては小さな機体です。

フォーランド ナットF1

イギリスのジェット戦闘機・練習機、フォーランド ナットF1です。

低コストな戦闘機を目指して作られた本機は、小型軽量にまとまっていますが、その為に航続距離や搭載量が不足し、イギリス空軍に戦闘機として採用される事はありませんでしたが、後に練習機型が採用される事になります。

戦闘機としてはインド空軍が採用し、印パ戦争ではパキスタン軍のF-86を撃墜するなど、戦果を挙げています。

ナットと人間

特筆すべきはその小型さで、上の写真を見ればその小ささが分かると思います。リンカーンと較べてみると、裏の五式戦闘機よりも小さいと分かると思います。展示物中、ナットより小さいのは桜花くらいではないでしょうか(Fa330は凧なので除外)。


デ・ハビランド モスキート

続いては木造機で知られる双発攻撃機、デ・ハビランド モスキートです。

本機は木造である事に加え、その高速性や実績で高い評価でも知られる機体です。


モスキート 前から

攻撃機以外にも、偵察機や夜間戦闘機としても使用され、第二次大戦における傑作攻撃機として知られています。

もっとも、木造である事が仇となり、高温多湿のアジアでは劣化に悩まされますが……。また、機体寿命そのものも短く、飛行可能な機体もあまり残っていないような……。


デ・ハビランド ヴェノム


傑作機の反動で一気に英国面が進むの巻。

デ・ハビランドのジェット戦闘機、ヴェノムです。ジェット戦闘機黎明期の作だけに、多分にレシプロ機の面影を引きずっております。

元々はバンパイアの能力向上型として開発されていましたが、再設計部分が多数あったため、バンパイアとは別の機体という扱いになりました。なお、元となったバンパイアは自衛隊でも研究用に1機購入され、現在も航空自衛隊の浜松広報館で見る事ができます。


ヴェノム 正面から

ヴェノムは前身のバンパイアと共に、世界各国で戦闘機として採用されており、イギリス海軍でも艦載型のシーヴェノムが開発されています。

ホントは上から見た写真があると良いんですが、狭い所に置かれているので全体像を抑えた写真が撮れなかったのが残念です。

続いては、戦間期の機体でマイナーではあるものの、重要な機体です。


ホーカー ハインド
戦間期の軽爆撃機、ホーカー ハインドです。

原型となったホーカー ハートは、1928年に初飛行した軽爆撃機で、当時の戦闘機よりも高速な為に大量生産され、派生型は各国空軍で使用されました。

ハインドはハートの後期の仕様で、イギリス空軍最後の複葉軽爆撃機でした。


ハインド 爆弾架

翼の下を見ると、爆弾架が多数設置されてますが、大戦機と比べると華奢で小さく感じます。


次は開発したのはアメリカですが、イギリスやカナダでも多数使われた航空機です。


PBY カタリナ

アメリカのコンソリデーテッドの飛行艇、PBY カタリナです。

日本の二式飛行艇のような四発飛行艇を見ていると小さく見えますが、戦後も長く消防機等で活躍した機体です。太平洋戦争が始まる頃には、後継機としてマーチン PBM飛行艇が生産開始されていましたが、戦時中にPBMが取って代わる事はありませんでした。


カタリナ 左から

優美な二式飛行艇と異なり、小型故の精悍さがあり、なかなか好きな機体です。

カタリナを製造していたメーカーの1つであるカナディア社は、現在はボンバルディアとして続いており、消防用飛行艇の製造販売を行っています。


スピットファイア
ハリケーン

説明不要ですね。第二次大戦を代表する英国機、スピットファイアとハリケーンです。両機は英国内の色々な博物館で見ることができます。


続いてその他の国の機体です。

FMA IA58 プカラ

アルゼンチンが60年代に開発した軽攻撃機、FMA IA 58 プカラです。

対ゲリラ戦等の非正規戦での運用が想定された、いわゆるCOIN機で、この機体はフォークランド紛争の際にイギリス軍が鹵獲したものです。

ゲリラ相手の非正規戦では低速なターボプロップ機は使い出がありますが、フォークランド紛争では地対空ミサイルで武装したイギリス陸軍に有効な攻撃が出来ず、本機の戦果はヘリ1機撃墜に留まっています。

機体の状態は良く、コスフォードでも損傷した機体を見る事ができました。敵機でも物持ちが良いイギリスです。

プカラ 左手から

先進国の軍隊を相手にするには荷が重いCOIN機ですが、安価な事から途上国では一定の需要があります。もっとも、最近はこの手の航空機もジェット化が進んでいます。

微妙な航空機ではあるものの、優美なデザインで私は好きです。


P-51 ムスタング

色んなとこで見ることが出来ますね。アメリカのノースアメリカン P-51ムスタングです。

設計はアメリカですが、エンジンはイギリスのロールスロイス マーリンを搭載しています。マーリンエンジンとセットで、イギリスのあちこちで見れました。


ロールスロイス マーリン

こう、目立つとこにドヤっと置いてあるのが如何にもイギリスです。

さて、ウォープレーン館も目ぼしいものは紹介できたと思います。次は冷戦館です。

つづく



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