2013年8月4日日曜日

まもなく進水する平成22年度護衛艦のおさらい

艦名バラしのトラブルがあった平成22年度ヘリコプター搭載護衛艦こと22DDHですが、まもなく進水式ですね。

今回は、進水式を迎えるのを前に、22DDHについて軽くおさらいをしてみたいと思います。

※2013/8/6追記。進水の様子を撮影し、YouTubeとニコニコ動画にアップしました!




22DDHイメージ 「我が国の防衛と予算」平成22年度より

■海上自衛隊史上最大の護衛艦

22DDHが注目される理由は、空母型の全通甲板を採用したことと、海上自衛隊史上最大の護衛艦になることが挙げられます。
全通甲板はこれまでも、おおすみ型、ひゅうが型で採用されてきており、22DDHはひゅうが型の拡大改良版とも言える存在ではありますが、基準排水量がひゅうが型の13,950トンから19,500トンと5,000トン以上も増加し、全長は51メートル長い248メートル、最大幅も5メートル長い38メートルと、これまでに無い大型化を果たしています。

22DDH、ひゅうが型、おおすみ型の比較図。@Gachar1203氏作成
22DDHはしらね型護衛艦を更新するものです。
しらね型護衛艦は、はるな型護衛艦(全艦退役済)の拡大改良型ですが、はるな型の基準排水量4,700トンに対し、しらね型5,200トンと、500トンの増加に過ぎなかった事を考えると、ひゅうが型と22DDHの規模の違いが異様であることが分かると思います。

そして、ひゅうが型と22DDHの違いは、船体の規模にだけに留まらず、武装、ひいては運用面でも相当な違いがあると考えられます。



■22DDHとひゅうが型の相違点

現時点で判明している、22DDHとひゅうが型、さらには更新されるしらね型の違いを表にまとめました。


ここで22DDHとひゅうが型を比べると、船体の規模だけでなく、武装も大きく違います。ひゅうが型がMK.41 VLSを備え、対空・対潜能力を備えているのに対し、22DDHは対空ミサイルは対艦ミサイル防護用のSeeRAMだけを備え、対潜水艦攻撃能力は艦自体には備わっていません。
武装面では、22DDHは個艦装備が大幅に防御専門装備に変更されています。

他方、22DDHはヘリの搭載容量がひゅうが型より3機増加した14機に。ひゅうが型には無かった輸送・補給能力が付与されており、艦の性格がひゅうが型とは随分違うことも分かります。

では、22DDHはどのような意図を持って、ひゅうが型と大きく性格の異なる艦になったのでしょうか。



■有事は対潜作戦、平時は輸送?

22DDHについての公式説明資料では、概ね下記の点が強調されています。
  • 国際平和協力活動
  • 大規模災害派遣
  • 対潜戦
このうち、国際平和協力活動や大規模災害派遣においては、輸送・補給能力が大きな役割を果たすのは言うまでもありません。22DDHの建造にあたるジャパンマリンユナイテッドの親会社、IHIのサイト内では、乗員数が便乗者含め約970名と記載されており、防衛省側が公表している乗員数約470名より500名多いです。このことから、乗員以外にも500名近い隊員を収容・宿泊できる能力が備わっていると考えられます。

また、対潜作戦の強化も謳われています。対魚雷防護用の装備の他、哨戒ヘリを7機搭載しており、これはひゅうが型の倍以上の数です。 個艦の攻撃手段が無いことから、護衛隊群の対潜作戦の中核として機能すると考えられ、僚艦防空能力のあるあきづき型護衛艦などとセットでの運用になるでしょう。

この搭載ヘリによる対潜能力の強化は、広範囲の浅い海域が広がる東シナ海での運用を念頭に置いたものと思われます。従来、自衛隊のASW(対潜作戦)は旧ソ連潜水艦を想定した、水深の深い海域や狭い海峡での活動に重点が置かれていましたが、近年は離島防衛や領土問題での対応が求められるようになったことからも、広範囲を捜索するためのヘリ運用能力の強化がなされたと考えられます。



■空母になるの?

22DDHを巡っては、規模の大きさから空母になるのではないか? とする意見が根強くあります。実際、海自が空母艦載機になるF-35B型を導入するという報道もありましたが、これは防衛大臣に否定されております。

FNNニュース:日本政府、艦載機として新たに「F-35B」導入を検討

軍事速報: 防衛相、F-35B導入検討を否定

しかし、現在防衛省では自衛隊の海兵隊化、水陸両用部隊の保有を検討しており、そのための手段としてオスプレイとは限定していませんが、ティルト・ローター機研究を始めていることを防衛大臣は述べています。

Q:中間報告では海兵隊的機能の充実という内容が盛り込まれていると思うのですけれども、今後米海兵隊が持っているオスプレイを日本の自衛隊に導入するというようなお考えはあるのでしょうか。
A:まず、水陸両用の機能を持つ部隊のことでありますが、これは日本の海洋権益は世界で6番目の広い面積を持っております。そしてそこには約 6,800の島があります。こういう島の防衛に関しては当然水陸両用の機能というのが今後必要だということで、今その整備については今回の中間報告の中で も触れて頂いているのだと思っております。当初から、オスプレイという名前ではなくて、いわゆるティルトローター機の研究については予算はつけておりま す。今後、その導入については、能力評価が出た段階で考えていくことになるのだと思っています。まだ決まっているわけではありません。


これを裏付けるように、先月アメリカで行われたドーンブリッツ演習において、オスプレイがひゅうがに耐熱版無しに着艦する様子が確認されており、22DDHも同様にオスプレイが着艦可能と考えられます。


ヘリコプター護衛艦「ひゅうが」の飛行甲板は耐熱処理済みか(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース


22DDHへの固定翼艦載機搭載による空母化の可否は、これまでの情報からは海のものとも山のものともつかないです。しかし、オスプレイなどのティルト・ローター機を配備する事は考慮に入れていると考えられます。このことは、500名の乗員以外の宿泊能力があることからも、22DDHが陸自隊員を載せ、ヘリやティルト・ローターなどでの強襲作戦で使うことを想定しているのではないでしょうか。

結論から言えば、空母化は戦闘機は分からない。しかし、ティルト・ローター機の運用は実現度が高いのではないかと思います。ただし、ひゅうが型と比して、エレベーターが大型化し、1基は外舷エレベータとなっていうることからも、ひゅうが型が運用できる機体よりもずっと大きな機体を運用できることは確かです。

22DDHは8月6日の進水式の後、艤装が施され、2014年度末に就役する見込みです。当面はヘリのみの搭載になりますが、今後はどうなるのでしょうか。



【関連書籍】





0 件のコメント:

コメントを投稿