2009年11月27日金曜日

事業仕分け人 金田康正 東大大学院教授のトンデモ認識



 先日から始まった行政刷新会議による事業仕分け。京速コンピュータ等の科学技術関連事業の見送り・縮小の評決が各方面から批判を受けておりますが、防衛関連でも自衛隊広報施設の予算削減、国際平和協力センター事業の廃止等厳しい評決が出ております。


 そんな中、本日は自衛官の実員増要求、備品、被服、銃器類・弾薬のコスト等の戦力の根幹に関わるものの仕訳も行われましたが、仕分け結果はどれも削減を求める悲惨なものでした。


 さて、この仕分け作業全体を通じて、様々なところで取り上げられる仕分け人達のズレた認識ですが、今回もかなり悪質な印象操作と同時にそれを露見させた方がいらっしゃいました。金田康正 東大大学院教授がその人です。ニコニコ生放送にて中継された金田教授の銃器・弾薬コストの仕分けにおける発言を録画してアップしましたので、以下の動画をご覧ください。






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 この金田教授、まず朝日新聞でのカラシニコフの記事を引き合いに出し、こう述べています。






 ガチガチに作っていないがために、例えば泥水に浸かったとしても水で洗えばね撃てるだとか、要するに有事に即した作り方をしているちゅうんですよ。そういう観点から、おそらく国産の場合は非常に綺麗に磨かなきゃダメだとか、どうせその~撃てばカスが溜まりますからその~かなりその~掃除しなきゃダメだということがあると思うんですが、そこらへんの観点で国産を選ばれていると思うのですが如何でしょうか。要するにカラシニコフみたいにほとんどメンテ、いや使ったことないから分かりませんけど、そういう観点、有事に即した形の銃器を選ばれているのかどうかちょっとお願いします。






 もう無茶苦茶な認識です。金田教授の言う朝日新聞のカラシニコフの記事というのは、松本任一氏が朝日新聞に連載した「カラシニコフ」のことを指すと思われますが、そもそもまともに「カラシニコフ」の連載を読んでいればこんな発言は出てきません。例えば「国産銃は綺麗にしなくちゃいけない」、「掃除しなきゃダメ」のあたりは、撃った後に銃の掃除をするのはどこの国も当たり前の話で、朝日新聞の「カラシニコフ?」にも米軍将校の話として「M16は優秀な自動小銃だが、掃除をきちんとしていなければならない」と述べています。発射薬の燃焼ガスが腐食の原因になる為、まともな軍隊では銃の掃除は必須です。掃除が必須な銃は有事に即していないとでも言いたいのでしょうか。第一、AK-47にだってクリーニングロッドは付いています。





 で、この質問に対し、防衛省担当者は89式小銃の部品点数が64式よりも少ないという形で考慮している旨を伝え、カラシニコフがどのくらい泥水に強いかまでは把握していないと伝えると、金田教授は以下の発言を行いました。






 いや、それは調べられた方が良いと思いますよ。






 なんかもう、カラシニコフの新聞記事すら読解することができない人が言えるセリフじゃないと思います。


 なお、カラシニコフについての誤認識はまだ続きます。この誤認識は事業仕分けの場において悪質な印象操作に等しいものです。






 インターネットで調べたら一丁30ドルから買えるというのもありましたからね。






 ソースはgoogleですかそうですか。


 これも金田教授自身が挙げた「カラシニコフ」の連載に価格は載っています。ロシアでのイズマッシュ社製AK-74の工場渡し価格は1丁120ドル、米軍がアフガニスタン国軍用に買ったルーマニア製AKは一丁250ドルです。銃価格の比較を行うなら、正規のルートでの価格を用いるべきで、崩壊国家からの流入品や密造品等が出回る闇市場での価格(闇市場でも30ドルは安すぎます。今のソマリアでは200ドルでも買えないとも「カラシニコフ」で出ています)を提示することは全くもって不適当であって、これを比較対象とすることは、自衛隊が闇市場より武器を調達しろと言っているのに等しいです。


 なお、補足までに言いますと、この120ドルと安価な価格でロシア政府にAKを供給しているイズマッシュ社は現在経営危機の最中にあります。


 今回の仕分けも相変わらず観ていて不快なものばかりでしたが、金田教授の誤った認識でずけずけと防衛官僚に「調べたほうがよい」と言える神経にはほとほと呆れました。





 最後に一つ。金田教授に出汁にされてしまった朝日新聞の「カラシニコフ」ですが、この連載自体はカラシニコフを軸にしたアフリカ等の紛争地域を描きだす傑作ルポです。ニコニコ生放送で「朝日新聞の~」と出てきたとき、一斉に批判的なコメントが流れていましたが、このルポは先入観を消してぜひ読んで頂きたいと思います。文庫化されて手ごろな価格で手に入りやすいのも○です。くれぐれも金田教授のようにならないように、真面目に読んでいってね!!!


 





※11/27追記:「仕分け」を「仕訳」と表記した個所がタイトルを含め多くありましたので修正致しました。





2009年11月12日木曜日

ニコニコ動画に在日米軍公式チャンネルオープン



 ニコニコ動画に在日米軍公式チャンネルが開設されました。





 在日米陸軍チャンネル


 http://ch.nicovideo.jp/channel/ch292


 
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 きちんと日本語字幕もあって、真面目に作っております。軍全体としての広報というより、日本での草の根活動に重きを向いているようで好感が持てます。「004. 米軍基地と日本の高校、フットボール試合で対戦」のジャパニーズイングリッシュっぷりはちょっと恥ずかしいけどご愛敬。


 陸上自衛隊もYoutubeにチャンネル持っていますが、国内企業のサービスであるニコニコ動画で在日米軍に先越されるのは好ましくないと思いますがどうでしょう。








 以下、Youtube内の自衛隊関連チャンネル


 陸上自衛隊 広報チャンネル


 防衛省補給支援活動 動画チャンネル





防衛技術シンポジウム2009 「中距離多目的誘導弾」



 昨日に続き、防衛技術シンポジウムにおける展示物の紹介です。


中距離多目的誘導弾


 中距離多目的誘導弾は79式対舟艇対戦車誘導弾と87式対戦車誘導弾双方の後継の誘導弾で、レーザーセミアクティブ・赤外線画像誘導の2つの誘導方式を採用しております。


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 中距離多目的誘導弾について、説明担当の方への質問とその回答を以下にまとめてみました。





質問「弾頭下部に突起がありますが、これはなんでしょうか?」



回答「この誘導弾は2つのシーカーを持っていますが、径内に2つを収めると制約が出る為に一つのシーカーを突起部にも納めています。この誘導弾は長距離に飛ばすことは目的にしていませんので、多少の空気抵抗の増加は無視できます。また、このような形の誘導弾を飛ばせることができるのも一つの技術です。」






質問「それぞれ別個にシーカーを積んでいるのですね。突起部のシーカーはなんでしょうか?」



回答「レーザーセミアクティブか赤外線画像誘導のどちらかです(微笑)」






質問「96式多目的誘導弾ではシステム全体が大規模なものになっておりました。中距離多目的誘導弾は搭載車両のみで射撃可能でしょうか?」



回答「96式多目的誘導弾のシステムが大きいものであるという声は我々も認識しておりました。中距離多目的誘導弾では1両で照準・射撃が可能です。」






質問「照準についてですが、赤外線画像誘導は撃ちっ放し性がありますが、レーザーは発射車両から照射するのでしょうか?」



回答「レーザーを照射するのは発射車両だけとは限りません。」



質問「87式中距離誘導弾の様に別個のレーザー照準でも照準可能ということですか?」



回答「はい、その通りです。」






質問「ネットワーク化も謳われていたとも伺っております。(注:後で気づきましたが、現在研究中の将来ネットワーク型多目的誘導弾システムと混同しておりました)」



回答「ネットワークという言葉自体はこの誘導弾のコンセプトにはありません。システム連接性という言葉で表現されています。ReCSへの連接による情報を得て、射撃が可能です。」









質問「79式対舟艇対戦車誘導弾の後継とのことですが、同じく79式の後継である96式多目的誘導弾との住み分けはあるのでしょうか?」



回答「96式多目的誘導弾は79式対舟艇対戦車誘導弾の後継ではありません。



質問「えっ、96式は79式の後継ではないのですか?」



回答「はい。96式は全く新しいカテゴリの装備になります。中距離多目的誘導弾が79式の後継となります。」






質問「失礼しました。では、79式対舟艇対戦車誘導弾と87式対戦車誘導弾双方の後継ということは、重MAT・中MATのカテゴリが統合されるということでしょうか。」



回答「はい、その通りです。双方共に時間も経過しておりますので、統合の上更新されます。」









 以上が主な質問とその回答となります。ご丁寧に答えて頂いたご担当者様、誠にありがとうございました。





2009年11月11日水曜日

防衛技術シンポジウム2009 「技本版偵察ソフトボール」



 年に1度、防衛省技術研究本部の研究成果を広く一般に紹介する防衛技術シンポジウムに今年も行って参りました。


 新戦車についての発表があった昨年、P-X・C-Xについての発表があった一昨年と比べ、単体の装備品で大きく注目されるものはありませんでしたが、新たな試みとして大学・工専での研究成果の発表がなされる等、産官学での将来技術研究を防衛技術に生かす事についてフォーカスが当てられています。そのことは、開会の辞における佐々木技術研究本部長も触れており、シンポジウムの副題「将来技術との融合を目指して」にはそのような意味合いも込められているとのことです。


 シンポジウムでの展示・発表につきまして、当ブログでは少しずつ紹介していこうと思います。





技本版偵察ソフトボール


 


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 昨年、「手投げ型情報収集ロボット」として紹介されていた偵察装置(以下写真)が、「携帯型小型情報収集器材」として継続して研究が行われているようです。


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 この装置は中心にカメラが固定されており、無線で操縦と映像の伝送を行えます。屋内や市街地での使用を想定しており、人が入れないところや死角を偵察する役割を持っています。


 上の写真は比較対象が無くて分かりづらいかと思いますが、今年展示されていたものは昨年より大分小さくなっており、重量も870グラムと1キロを切っております。


 動作デモの様子をニコニコにアップしましたのでご参考までご覧ください。昨年よりも若干凹凸に強くなっています。



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 使われている部品はほぼ汎用品で、操縦も無線LANを使用したものになります。昨年と違って、操作はジョグスティック状の物になり(昨年はプレイステーションライクなゲームパッド)、片手で操作可能となりました。


 今後の課題としては、投擲の衝撃に耐えることとのことでした。昨年お聞きした課題は手投げ可能にすることと記憶しておりますが、今年の実機は手投げ可能なレベルにまで小型化されており、昨年の課題はだいぶクリアしたとは言えるのではないでしょうか。





防衛技術シンポジウム2009 速報



 防衛省技術研究本部による防衛技術シンポジウム2009速報。取り急ぎ、写真のみ。


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 本文、映像等は後ほど。