2009年1月25日日曜日

防衛省技術研究本部発表会 特別講演「日米新政権下における日米同盟」



 今週最大のニュースは何かと言いますと、やはりアメリカでオバマ大統領が就任したことでしょう。100年に一度とも言われる金融危機、世界情勢の混迷と課題が山積みですが、黒人初の大統領、8年ぶりの民主党政権ということもあり、注目が集まっているのは周知のことです。


 一方、日本もリーマンブラザーズ破綻直後の2008年9月24日には麻生新政権が発足。様々な困難に世界が直面する中、日米新政権下で日米同盟はどう変わっていくのでしょうか?


 本日は当ブログでも何度かレポをお伝えした平成20年の防衛省技術研究本部研究発表会における特別講演、森本敏氏によります「日米新政権下における日米同盟」の要約をお伝えしようと思います。





森本敏氏とは?


 本講演は防衛省技術研究本部研究発表会において、技術以外の特別講演として行われたものです。講演者の森本敏氏は1965年に防衛大学校卒業、航空自衛隊に入隊。1979年に外務省に入省し、退官後は野村総合研究所首席研究員、拓殖大学海外事情研究所所長・同大学院教授を務めている国際政治学者です。元自衛官であることから、安全保障問題についても著書があり、テレビ出演もされていますのでご存じの方も多いと思います。まあ、氏の経歴の詳細はWikipediaをご覧になった方が早いと思いますが……。





講演要約


 今回は講演の中で、外交・安全保障についての話を中心に要約してみたいと思います。例によって、ノートとうろ覚えの記憶からですので、話し半分に聞いて下さいね。


外交政策全般




  • オバマスタッフは600人いると言われている。その中で安全保障・外交担当は40人しかいない。

  • 現在、アメリカ陸軍は「建国建軍以来、最大の危機」にあり、陸軍をいささか抑えつつ、同盟国への協力を求めることになる。

  • 孤立主義と言われるが、それは間違い。国力再編の為の多国間協力となる。


対中関係




  • オバマスタッフの中でアジア政策担当はほとんどが中国専門家。

  • 中国と協調関係を築くだろう。但し、日本軽視と見るのは間違い。

  • 民主党の対中基本路線は、中国をアメリカの価値観を共有させるための関与政策。オバマ政権もそれを踏襲するとみられる。

  • 海洋と宇宙に拡大する中国に対し、ヘッジ戦略(注:保険的予防措置、要はどっちに転んでも対処できるよう手を打つ戦略)より、ステークホルダー(注:利害共有をする関係にすること)を重んじて対応するだろう。

  • 中国に対し、封じ込め戦略はできない。しかし、中国に物を言う関与政策を取る。具体的には国際ルールの遵守、人権問題、為替問題に対して。

  • 同盟国のポテンシャルを必要とする。その為に、アメリカの対中政策の関係に日本が巻き込まれる恐れがある。

  • 軍事力ファクターは少なくなる。日本には頭が痛い問題で、米軍再編が変更される可能性がある。


対日関係




  • オバマ次期大統領(当時)が、麻生総理と英語で電話をかけたことで対日関係を重視しているとの憶測もあるが、これは社交辞令と捉えるべき。

  • アメリカでは同盟国日本に対する不満が、実務者の間で高まってきている。

  • 日本も六カ国協議におけるアメリカのやり方に不満を持っている。

  • 小泉・ブッシュ政権時代の蜜月関係は、多分に両者の私的信頼関係によるものであり、小泉政権以降の日本政権はそのレガシー(注:遺産)を食いつぶしている。どう再構築するかが課題。

  • 六カ国協議はブッシュ時代とさほど変わらない姿勢。日本は拉致問題で手が縛られることを考えなければならない。

  • 日本が新しい政権とどう向き合うかを、向こうが投げてくる前に日本は決めて、新政権に投げるべき。具体的にはアフガンにどう対処するかである。

  • 日米同盟は今まで以上に強くならなければいけない。隷属的、従属的な同盟関係から主体的同盟へと転換すべき。

  • F-22問題に対しては、兵器体系を説明しなければならない。コンセプトを作らなければならない。





私感


 以上が講演の要約になります。全体的にはブッシュ政権の失策を批判しつつ、オバマ新政権へは好意的な内容だったのですが、行為とは別に日本にとっては難しい舵取りを迫られることになるとことでした。麻生政権に対しては批判的トーンが強く、給付金問題で自民党をまとめられていないことを批判していました。どちらかと言うと、森本氏は保守傾向の強い方と思っていたのですが、講演内容は非常にバランスがとれており、全くもって同意できる意見でありました。


 さて、日本の安全保障と外交にとって頭が痛い問題が多いですね。特に米軍再編変更とアフガンへの対処は重大問題で、前者は防衛政策の根本から再考を迫られますし、後者はほぼ確実にアフガンへの自衛隊派遣に繋がり、戦闘に繋がる恐れが非常高いでしょう。ブッシュ政権は単独主義だと世間では批判されていましたが、裏を返せば単独主義と言うのは、自国のリソースを問題解決に注ぎ込むものです。今のアメリカにリソースはありませんから、必然的にオバマ新政権は多国間協力を取らざるをえません。つまりは、同盟国のリソースを使うことになります。


 まだスタートしたばかりのオバマ新政権は、その要求を外国には示していません。森本氏が言うように、日本は新政権とどの様に向き合うかを決め、オバマ新政権が要求を出す前に向こうに投げるべきでしょう。その中には自衛隊のアフガン派遣という、「出血」を伴うであろう選択も含まれることになります。


 「出血」をアメリカに強要されるか、日本が主体的に行うか。同盟のあり方が問われています。





2009年1月18日日曜日

メモ:軽装甲車両の防護基準



 プロフィール欄にも書いてはおりますが、このブログにはミリタリー関連の資料置場としての機能があります。


 もっとも、映像資料はそれなりに貯まりましたが(ニコニコ動画のサービスに丸投げとはいえ)、軍関係の理解に役に立ちそうな資料はあんまないということに最近気が付きました。そういう訳で、自分の勉強も兼ねてメモとして資料を掲載していきたいと思います。





軽装甲車両の防護基準


 今回は軽装甲車両の防護基準について、NATOが策定しましたNATO統一規格(STANAG)第4569号に定められた軽装甲車両又は支援車両が備えるべき抗堪性の基準を挙げてみます。


 まず、下の表が小銃弾等・155mm榴弾破片に対する抗堪性の基準です。各レベルで車体全周に対して90%以上抗堪することで基準を満たすとされています。


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 次は地雷等に対する抗堪性の基準です。レベル2以降は対戦車地雷を想定していますが、想定されている地雷は爆風効果型であり、成型炸薬(HEAT)型の対戦車地雷は従来の装甲技術では抗堪が困難であるため対象外となっております。


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 ここで以前アップした82式指揮通信車の耐弾試験の動画を見てみましょう。



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 この動画を見る限りでは、82式指揮通信車は最低でも7.62mmNATO普通弾と対人地雷に抗堪していることが分かります。12.7×99mm普通弾(推定)による試験が行われている様子を映した動画もありますので、それを加味すると82式指揮通信車の小銃弾等に対する防護レベルは、NATOの基準ではレベル3から4ほどは最低でもあると推定されます。(155mm榴弾は不明な点もありますが)


 一方、地雷等に対しては最低でもレベル1にあると推定されます。もっとも、基本的には路面を走る装輪装甲車ですからこの程度で良い、若しくは装輪車両の限界なのではないかと推測されます。





参考文献


陸戦研究海外部会「海外情報(533) 軽装甲車両の防護力基準等について」陸戦研究 2007年12月号





2009年1月12日月曜日

平成21年 陸上自衛隊第1空挺団 降下訓練始め



 連休2日目は第1空挺団の訓練降下始めに行って参りました。


 訓練降下始めとは、元々1969年に空挺団の部内行事である「開傘祈願祭」としてスタートし、それが1974年より一般公開され、1976年からは防衛庁長官臨席の行事にまで発展した行事だそうです。都内に近い習志野演習場にて実施される為、非常に人気があるイベントとしても知られています。


 今回、私は寝坊で良い場所も取れずに会場の隅っこにいたため、撮影に支障を来した上、会場アナウンスをまるで聴き取れず、訓練の進行・段どりが全然分かりませんでした。よって、動画や写真の解説は相当怪しいので話し半分ということで。





 まずは当日アップしました動画です。



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 訓練の開始少し前から撮影し、模擬戦の終了までを撮影・収録しました。撮影場所が悪かった上、ほぼ最大ズームで撮り続けたのでブレが本当に酷くて……。いつもはろくに編集せずにエンコードしてアップするだけなのですが、今回は映像の拙さを少しでも補おうと編集と字幕はそれなりにしてみました。


 コメントでもご指摘を受けましたが、ビデオカメラのシャッタースピードが速かったせいでOH-1のローターが止まって見えます。遅くすればスピーディーに見えて見栄えがするのですが、これも今後に役立てたいと思います。ただ、OH-1や他のヘリを見ていると、ローターの回転スピードの違いが判り易く見えるので、これはこれで面白いと思いました。


 ビデオが主体だったので写真は少ないですが、以下にちょいと。


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 航空自衛隊の国産輸送機C-1。後継機C-2が飛ぶ日はいつの日か……





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 動画で構築の様子を撮影しましたが、普通科火力の要たる迫撃砲。偽装ネットの張り方が判ったのは収穫でした。動画の8分20秒あたりにありますので、興味のある方はどうぞ。





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 73式小型トラックの古い奴ですかね、これは。M2重機関銃を積んでおります。





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 訓練後半。炎上する演習場とその付近で伏せる隊員。手前に置いてあるのは87式対戦車誘導弾の発射筒でしょうか。





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 少し視野を広くした写真。煙が凄いです。





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 陽炎の奥に89式装甲戦闘車が。





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 01式軽対戦車誘導弾の発射筒が転がっています。伏せで小銃付属のバイポットを使用している隊員が多いことが分かります。陸上自衛隊の特徴の一つですね。





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 訓練終了後。真ん中の人、相当重いだろうなあ……。ご苦労様です。





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 BMD防衛の要、第1高射群第1高射隊のPAC-3のランチャーです。説明されていた隊員は航空自衛隊独自の迷彩服でしたのですぐに分かりますよね。





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 話題の内張り。これは軽装甲機動車です。同一の内張りが車内の全面に張られていました。もっとも、耐破片用というより緩衝材のようです。





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 軽装甲機動車のドアです。ドアの素材とは別に内側に鋼板が張られているのが分かります。弾丸貫徹力は様々な状況によって変化するので一概に言えませんが、M1ライフルで7.62mmM2弾を売った場合、距離100mで3.2mm鋼板を3枚貫徹するとのこと(古いデータですみません)。この厚さで防弾鋼であることを考えますと、少なくとも小銃弾に対する防護は充分ではないでしょうか。(小銃弾で簡単に抜けると主張する人もいるので、とりあえず書いてみました)





平成21年 陸上自衛隊第1空挺団 降下訓練始め 模擬戦



平成21年1月11日に行われた第1空挺団の降下訓練始めの模擬戦の動画です。


場所が悪かったのと、風が強かったのでブレが酷いです。ご了承ください。


取り急ぎ、動画まで。



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2009年1月9日金曜日

新年のごあいさつ



 もう正月は過ぎてしまいましたが、改めまして新年のご挨拶を。


 明けましておめでとうございます。


 昨年3月に見切り発車でスタートしたこのブログですが、予想だにしていなかったほど多くの方に閲覧頂きました。こうして年を越せたのも、ひとえに皆様のアクセス、コメントの賜と心より感謝申し上げます。


 本年も当ブログをよろしくお願い申し上げます。





「ガラパゴス化しているのは彼なのか?」



 昨年の12月31日に「週刊オブイェクト」さんに掲載された「内張り装甲とは結構、分厚いもの」において、当ブログの「防衛省技術研究本部発表会 展示セッション簡易レポ(軽量装着型付加装甲)」から写真と本文の一部を引用して頂きました。その記事の中でブログ主のJSF氏は「コンバットマガジン」2009年2月号に掲載された清谷信一氏のレポート「技本発表会 ガラパゴス化する日本の防衛技術」における清谷氏の不見識を指摘しています。2008年11月の防衛省技術研究本部研究発表会にて展示されていた「軽量装着型付加装甲」について、清谷氏がその存在自体を理解しておらず、見当違いなことを書いているという内容です。


 JSF氏の指摘の詳細は「週刊オブイェクト」さんの記事を読んで頂きたいのですが、私はJSF氏の記事を読んで初めてレポのことを知りました。そこで私もコンバットコミック(訂正:マガジン)を買ってきてそのレポを読んだのですが……はっきり言って、読後に不快感だけが残りました。JSF氏が指摘されたような明らかな間違いの他にも、悪質な印象操作をしているとしか思えない箇所が存在します。清谷氏は発表会のごく一部だけをクローズアップし、自身に都合の良い様にレポを書いたようにしか思えません。


 今回は、清谷氏の発表会レポのおかしなところについて書こうと思います。





-解説員は研究を知らない?


 以下の黒枠内は、コンバットマガジン2009年2月号「技本発表会 ガラパゴス化する日本の防衛技術」からの引用になります。



 このような技本の研究成果の展示が行なわれることは意義があることだ。だが一方で不満もある。展示に当たっていた解説員が、実はあまりその研究に熟知しておらず、充分な説明を受けられない、あるいは質問の意図を理解できないことも多々あった。



 以上の様に、清谷氏は解説員の知識不足に不満を述べています。これは一部は事実です。と言いますのも、解説はその研究に従事している研究者が行っているとは限らなかったからです。私も三次元複合材について質問したところ、そこでの解説係は自分の研究ではないと断った上で説明してくれました。しかしながら、この程度のことは発表会が平日の業務中に行われていますので解説に割けるリソースが限られていると言えますし、なにより解説に不満を感じませんでした。私が話を聞いた中では専任でない解説員はその一人だけで、あとは自分の研究分野について説明をしている解説員でした。中でも車両コンセプトシミュレータの解説を行っていたのは、論文でもよく名前を見かける陸上装備研究所の方で、シミュレータから新戦車についてもメディアで報道されている事以上のことを話されていました。


 ここで疑問に思うのは、清谷氏は解説員の話をちゃんと聞いていたのか? ということです。JSF氏が指摘された内張り装甲にしても、清谷氏は道路法の制限から作られたものだと見当違いなことを書いていますが、私は解説員から着弾時に車体内への破片を防ぐ目的として使われる旨を聞いております。


 その他の研究についての清谷氏のコメントでも同様な事が言えます。以前、私もレポートした「壁透過レーダー」についても、清谷氏は英国などでより小型のものが実用化されており、技本が開発する必要はないとしています。……装備と研究品を比べて、装備の優位性を挙げることの無意味さを彼は理解しているのでしょうか? 卵とブロイラーを比較して、「ブロイラーの肉の方が栄養価が高い」と言っているようなもので、まるで無意味です。そもそも「研究」とは何かということを理解しているのかも疑問です。「研究」とは「ニーズに対応した先進的な研究試作や提案」のことであり、発表会の会場で配られていた技本のパンフにもそれは明確に書かれています。実用に供する装備とは性質が異なっていて当然です。そのことは研究品を見ればすぐに分かります。では、その問題の壁透過レーダーの実物を見てみましょう。


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 確かに大柄です。しかし、これには理由があります。ここで裏の写真を見てみましょう。


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 研究用のデータ出力・制御の為に、USBポートやVGAコネクタ等の汎用品が使われています。私の質問に対し、技本の方は展示品が研究中のために汎用部品を多く使っていること、研究データを取るためのデバイスも実装しているので装置が大きいと説明して頂いた上、装備化の際は腕に装着できるサイズにしたいと構想を明らかにしてくれました。このように装備と研究品は別物なのです。ジャーナリストであるはずの清谷氏は、何故この程度のことも理解せず、聞き出すこともできなかったのでしょうか? 私には、解説員から話をろくに聞き出せなかったことを、解説員のせいにしているだけに思えます。





-後追い研究は不要?



 すでに実用化され、多くの企業が似たような製品を出し、実戦を通じて改良を行っている製品を、敢えて技本が後追いして研究する必要があるのだろうか?



 清谷氏はレポの中で、上記のように壁透過レーダーのみならず、機関砲や軽量榴弾砲などを槍玉に挙げて「諸外国の後追い研究」と批判しています。しかし、後追い研究の何が悪いのでしょうか? 後発の研究は、先行する研究の教訓を取り入れられる利点があるのは言うまでもありませんし、研究を行うことで外国製装備の導入にあたっても利点があるとは思わないのでしょうか?


 しかし、後追い研究に関しての清谷氏の認識の問題点はもっと別な所にあります。レポの中で清谷氏はある研究に対して以下の様に好意的な見解を示しています。



 今回筆者が一番興味を持ったのはポスター展示の、コマツ社が発表したハイブリッド装甲車の研究であった。これは技本の研究ではなく、コマツ社が将来を見越し、自社独自で行っているものだ。ハイブリッド装甲車が実用ともなれば、その設計も運用も、また兵站も既存のディーゼル車とは大きく異なってくる。これこそまさに技本が研究すべきテーマではないだろうか?



 清谷氏は「ハイブリッド」を非常に先進的・革新的なものと捉えていることが文面から伺えますが、これは大きな間違いです。誤解されがちですが、この研究の「ハイブリッド」とは、トヨタのプリウスのようにエンジンを発電以外にも駆動力として使う様なものではなく、純粋にエンジンを発電のみに使用してモーターのみで駆動するシリーズ方式のことを指します。このシリーズ方式は、ガス・エレクトリックやディーゼル・エレクトリックとして既に知られており、戦闘車両では大戦中のドイツ戦車であるエレファント駆逐戦車、マウス重戦車等で採用された技術と同種のものです。トランスミッションが不要になったり、制御が容易になるなどの利点があり、昔から研究されていますが、燃料とバッテリーの2種類のエネルギーを積むことによる非効率性から戦闘車両としては未だに満足の行くものはできていないのが現状です。


 古くから各国で行われている研究(追記:当然防衛省も)であり、清谷氏から見れば「諸外国の後追い」どころではないと思うのですが、それを何故評価しているのでしょうか? もし、シリーズ方式の「ハイブリッド」を知らなかったとするならば、それは清谷氏の怠慢です。コマツの解説員はきちんと「プリウスの様なハイブリッドとは違う」と私に説明してくれましたし、このことは技本のHPに掲載されている要旨にきっちりと書かれています。逆にシリーズ方式を理解していたならば、こんな古くからある研究を賞賛する一方で後追い研究を批判するというのはダブルスタンダードでしょう。





-ガラパゴス化しているのは誰だろう?



 日本の防衛技術は外国製品という「外敵」が入ってこない、日本独特の法的な縛りや慣習から、まるでガラパゴスやオーストラリアの生物のような「進化」を遂げているのではないだろうか? それで有事に役に立つ装備が本当に開発できるのだろうか?



 以上の様に、最近流行りの「ガラパゴス」という言葉を使い、清谷氏は日本の防衛技術開発に疑問を投げかけています。自衛隊に数多くの外国製品が導入されているにも関わらず、このような言い草は印象操作も甚だしいですし、ある程度の産業基盤を有する国が装備の国産化を行うことは当然のことです。また、技術研究本部研究発表会では、米国の研究施設に派遣された技本職員、技本の先進技術センターにて研究中の米軍人、韓国国防科学研究所職員らによる講演も行われており、これらの国際的な技術交流について書かずにガラパゴスだの言うのはあまりに恣意的です。


 コンバットコミック(訂正:マガジン)のレポを読んで思ったことは、情報から隔絶することでガラパゴス化しているのは、他ならぬ清谷氏ではないかということです。少しは人の話聞こうよ。








 でも、「ガラパゴス化」と言う言葉は、日本市場で求められる水準以下で国際標準が決まることにより日本が国際標準から取り残されることを指しており、こと防衛分野に限って言えば「ガラパゴス化」とは国際水準以上の防衛力を持っていることになり、日本にとってはいいことなのかもしれません。