2009年12月26日土曜日

防衛技術シンポジウム2009 「先進装具システム」



 近年、先進国の軍隊では兵士個人の情報共有の強化や生存性の向上の為、IT機器や防弾装具を統合化した個人用装備の研究を活発化させています。


 こうした個人用装具の研究として、良く知られているものはアメリカのFuture Combat System(FCS)計画でのFuture Force Warriorや、フランスのF〓LIN等があります。


f:id:dragoner:20091226231245j:imageFuture Force Warrior (写真原著作者:Hohum


f:id:dragoner:20050614162923j:image:w800F〓LIN (写真原著作者:Rama





 こうした個人用装具開発の流れを受け、日本でも平成15年度より先進装具システムとして研究が行われており、ここ数年の防衛省技術研究本部でもそのシステムの一部が公開されるようになりました。





f:id:dragoner:20091110154452j:image:h640 先進装具システム全体像


f:id:dragoner:20091110154647j:image:w800 先進装具システム ヘルメットと軽量化小銃





 この先進装具システムは前述のF〓LINに近いもので、ヘッドセットやヘッドマウントディスプレイ(HMD)等が統合されたヘルメット、隊員の身体状況をモニターするバイタルサインセンサやコントロール装置を統合した防弾アーマー、カメラを備えた電子照準具等が付加された軽量小銃のおおまかに3つの部位より成り立っています。


f:id:dragoner:20091110154634j:image:w800 先進装具システム 説明パネル





 さて、どのような情報共有をするのかにつきましては、私がここで書くよりもシンポジウム会場にて実演を兼ねた説明が行われておりましたので、そちらを見て頂いた方が分かりやすいと思います。説明の様子をニコニコ動画にアップ致しましたので、以下の動画を御覧下さい。






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 以上の動画から、GPSを利用した自己位置の標定・連絡、ガンカメラの映像の送信・共有、電子照準器を用いた遮蔽物からの射撃等、HMDによる情報共有の様子や生存性の向上に繋がる運用がお分かりいただけたと思います。また、映像の2分40秒以降の遮蔽物に身を隠しながらの射撃はF〓LINと同様の機能があることが伺えると思います。


f:id:dragoner:20091226235453j:imageF〓LINによりガンカメラからの映像で遮蔽物に身を隠しながらの射撃 (写真原著作者:RAMA)





 この様に各国や自衛隊でも行われている先進装具の研究ですが、各国とも共通して抱えている問題があります。それはシステムの重量とバッテリーの問題になります。これらのシステムに加えて暗視装置や通信システム等、他の装具を付けてしまうと装備全体の重量が40kgを超えてしまう例もあり、より一層の装備の軽量化が求められます。システムに電気が欠かせない為、長時間持つバッテリーの開発やシステムの省電力化等、装備化には大きなハードルがいくつもあります。


 HMDによる視覚での情報共有は非常に有効なのは事実なのですが、それを人体という脆弱で非力なプラットフォームに実装することになる為、重量やサイズの問題が重大なものになります。これら重量問題を解決するため、人間が持てる重量を増加させるパワーアシストスーツの研究もアメリカでは行われていますが、これも相当長い間研究が行われている割には未だに実用レベルには達しておらず、今後も相当の時間がかかると思われます。


 フランスではF〓LIN装備化の為の発注が行われたそうですが、重量問題が兵士にどう受けいられるか、今後とも注目していきたいと思います。





参考


防衛技術協会「おもしろサイエンス 未来兵器の科学」日刊工業新聞社






2009年12月25日金曜日

防衛技術シンポジウム2009 「次世代近接戦闘情報共有システム」



 11月に行われた防衛技術シンポジウムのレポートが遅れ申し訳ありません。


 現場で展示されていた資料が後日、防衛省技術研究本部のホームページにて配布されると伺っていたため、資料入手してから再構成すればいいっか、と思って伸ばし伸ばしにしていたら、もう年末になってしまいました。幸い、先日技術研究本部のページで資料が公開された為、現場で伺ったことや撮影した写真、公開された資料の内容も合わせてレポートしたく思います。





紹介のその前に


 さて、今回「次世代近接戦闘情報共有システム」を紹介するにあたり、一度おさらいを行いたいと思います。


 前回の記事「携帯電話と自衛隊無線機の違いについて」で基地局の有無が無線機と携帯電話の違いであることを説明いたしました。インフラに頼らない無線というのは、確かに有事を想定する自衛隊では重要なのですが、無線機単体ではどうしても通信距離が短くなってしまいます。


 また、通信距離の問題の他にも障害物の問題もあります。皆さんもビルの奥や地下室に入ったら携帯電話が圏外になって使えなくなったことがあると思います。これは電波が障害物により減衰したり反射することで受信が困難になる為ですが、これと同じ現象が自衛隊の無線機でも発生致します。


 では、上で挙げた通信距離の問題、障害物の問題を解決するにはどうしたら良いでしょうか?





 最も簡単な答えは、基地局を作って中継させることです。





 「携帯電話と自衛隊無線機の違いについて」を読まれた方はこの答えに対してツッコミたくなると思います。基地局の費用、基地局の圏外の問題、基地局が使えなくなった際の問題等、様々な点でご指摘があると思います。ですが、ここでいう基地局は建設するものではありません。誤解を恐れずに言うと、人間自体が基地局になるのです。技術研究本部ではそのようなコンセプトで「次世代近接戦闘情報共有システム」の研究を行っています。





無線機のウェアラブル化


 「次世代近接戦闘情報共有システム」ですが、システムではなく無線機単体としては、ウェアラブル無線機と呼ばれています。つまり「身につける無線機」です。


f:id:dragoner:20091224210300p:image:h640防衛省技術研究本部 「ウェアラブル無線機の研究 ~携帯型ソフトウェア無線機の実現について~」より引用





 従来の「ゴツイ携帯電話」の様な形状から、上の画像の様な小さい箱型形状になりました。この小型化により、無線機を体に装着することが可能になりました(まあ、従来もやろうと思えばできますけど……)。この無線機単体では使用できませんので、下の写真の様にヘッドセット等の音声入出力装置、ヘルメットや戦闘服に取り付けるアンテナを装着することで無線機として使用することになります。


 


f:id:dragoner:20091110165131j:image:h640





 従来の無線機のように「携帯する」のではなく、無線機やアンテナを体に装着する、つまりは「身につける」ことで隊員の行動に制約をかけることなく無線通信ができます。


 では、このような無線機のウェアラブル化がどうやって「通信距離の問題、障害物の問題」を解決するのでしょうか。





隊員自身がネットワークの一部になるアドホックネットワーク


 ちょっと話を変えましょう。近年、PSPやニンテンドーDSの携帯ゲーム機を無線LANで接続して多人数プレイする人を街中で多く見かけるようになりました。これで使われている技術はアドホックネットワークと呼ばれるもので、ネットワークの中心となるサーバーやインフラを介さずに端末だけでその場限りの無線ネットワークを構築することができます。「通信距離の問題、障害物の問題」を解決する鍵がここにあります。


 無線機のウェアラブル化により、隊員自身に無線機を装着することで言わば隊員そのものが無線端末となります。ここで隊員同士がアドホックネットワークを構築することにより、問題の解決が可能です。


 例えば、2つの無線機間の距離が離れすぎて通信ができない場合でも、以下の図のようにアドホックネットワークを構築していれば、間に別の無線機(隊員)を中継させることで通信距離の延長を図ることができます。先程述べましたように「基地局を作って中継する」ことを無線機を基地局代わりにして中継することで実現します。


f:id:dragoner:20091224224203p:image:w800





 また、隊員同士でネットワーク化されている為、下の資料の様に隊員を中継することで、電波が障害物に邪魔されて届かない隊員も通信が可能となります。


f:id:dragoner:20091110165142j:image:w800





 担当者の方に伺ったところ、この様なアドホックネットワークを実現する為にウェアラブル無線機には自動的に最適なネットワークルーティング(ネットワークの経路と思ってください)を選択し、隊員の移動等でネットワークが一部欠けてもすぐにネットワークを再構築するプロトコルが実装されているとのことです。隊員は操作することなく、装着しているだけで自動的にネットワークが構築されるのです。


 このようなウェアラブル無線機やアドホックネットワークを実現した技術要素として、ソフトウェア無線技術があります。昨年の防衛技術シンポジウムレポートで紹介致しました「将来統合無線機」の技術の延長線上にあるものです。


f:id:dragoner:20091224230148p:image:w800防衛省技術研究本部 「ウェアラブル無線機の研究 ~携帯型ソフトウェア無線機の実現について~」より引用





 上図の様に、最初は無線機能のソフトウェア化から研究を始め、共通アーキテクチャの適用を経て、将来統合無線機という形で車載向け等で実用的な研究に供される形になり、更に小型化が進んで隊員に装着できるまでになりました。ウェアラブル無線機は将来統合無線機と同じように、データや映像の送信も可能であり、映像の共有を隊員間で行う実験等も行われております。無線機やアンテナ、更にはカメラ等も含めて「次世代近接戦闘情報共有システム」が構成されることになります。


 戦闘に限らず、組織の成功の如何は、情報の伝達や共有のスピードや効率に由る所が大きいです。このような研究が装備化に繋がることで、自衛隊の能力向上に貢献することになるでしょう。





参考資料


防衛省技術研究本部 「ウェアラブル無線機の研究 ~携帯型ソフトウェア無線機の実現について~」





2009年12月16日水曜日

携帯電話と自衛隊無線機の違いについて



 以前アップした動画の話になります。



ゆっくりで学ぶ、自衛隊装備 「衛星単一通信携帯局装置」



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 この動画ですが、記事中にもあるように映像面で取っ付き易く、「こんな装備もあるのよん」という紹介的な意味で作ったのですが、以下のようなコメントが散見されました。






 携帯電話とどこが違うの?






 このようなコメントが意外と多く、携帯電話と無線通信機の違いを認識されていない方が多いことに軽いショックを受けました。しかしながら、現代社会においては誰もが小型で便利な携帯電話を使っており、わざわざあんな大きな無線機を自衛隊で使っていると知ったら疑問に思われるのも無理はないのかもしれません。


 そこで今回は、携帯電話と自衛隊の無線通信機はどう違うのかについて、簡単な電波の話も交えて書いてみたいと思います。











膨大なインフラが必要となる携帯電話




 携帯電話と自衛隊の無線機の最大の違いとも言って良いのがインフラ利用の有無でしょう。一般的に無線機は無線機が2台あれば通話は可能です。しかし、2台の携帯電話間で通話をする場合、その間には膨大なインフラを経由することになります。以下にその概念図を示します。


f:id:dragoner:20091216223901p:image:w800





 上図のように2台間の通話であっても、非常に多くの施設・装置に頼らざるをえないのが携帯電話です(念のため書きますが、概念図ですのでかなり端折ってます。更に制御装置等があります)。特に数を要する施設は基地局で、現在の携帯電話は電波の出力が大きくても600mWで、一つの基地局がカバーできる範囲(セル)は半径十kmが限界となっています。





f:id:dragoner:20091216230411j:image 基地局の例(原著作者:Starbacks





 携帯電話の利用者が多く、電波の障害となる建物が多い都市部では「マイクロ・セル」と呼ばれるセル半径が数百メートルの基地局が多く設置されており、これが基地局の数を膨大なものにしています。膨大と言うだけでは、どれくらいの数の基地局が必要かイメージが付きにくいと思います。具体的な基地局の数については総務省が集計を出しており、そこから携帯電話の基地局のデータを以下に引っ張ってきました。





f:id:dragoner:20091216230225p:image2009年10月における基地局数





 このように第三世代携帯用の基地局だけで10万を超えており、携帯電話より出力が小さいためにセルが小さいPHSは17万も基地局を抱えているのが現状となっております。


 これら莫大な設備を抱える携帯キャリアは多大な設備投資を行っており、平成20年度のNTTドコモは携帯事業に6,013憶円の設備投資を行っております。防衛省の年間の装備品等購入費が5,000憶円ほどですから、この金額がいかに膨大なものかが分かると思います。


 投資の問題に留まらず、これらのインフラは非常に脆弱で、例えば2001年の米国同時多発テロの際、ニューヨークへの通話が(通話の殺到により)繋がりにくくなったことはよく知られていますし、有事の際はインフラに対する破壊工作による不通も考えられます。有事での活動を前提としている自衛隊にとり、有事での可動が担保されていない限り、そうそう使えるものではありません。


 余談になりますが、東京近郊在住の方は普段から携帯電話関連の施設を意識せずに見られているかもしれません。代々木にあるNTTドコモ代々木ビルは15階から上は、携帯電話用の設備とアンテナを収容する機械室で占められており、新宿近辺のNTTドコモの通話を支える施設となっております。これだけも携帯電話を全国に行き渡らせるのに莫大な投資が必要かが分かるでしょう。


 


f:id:dragoner:20091216234507j:imageNTTドコモ代々木ビル(原著作者:Wiiii)





 なお、自衛隊の無線機でも以前紹介致しました衛星単一通信携帯局装置は通信衛星というインフラを使用しますが、それでも携帯電話と比べればずっと簡素なものとなります。もっとも、無線機でも他とは若干異なるカテゴリに属する装置なんですけども、話が大きくズレてしまうのでここらへんは割愛致します。


 


軍事用として求められる機能の有無




f:id:dragoner:20081115114935j:image:h480 85式野外無線機を背負う隊員





 さて、インフラに関する話はなにも自衛隊の無線機に限った話ではなく、警察無線や航空無線、アマチュア無線等でも同じことが言えます。ここではインフラ以外の自衛隊が求める軍事用無線機の機能について述べたいと思います。







  • 電子戦機能


 自衛隊の無線機である以上、敵の妨害や傍受への対抗策を備えております。例えば、現在85式野外無線機の後継として配備が進められている新野外無線機には、周波数ホッピング機能が搭載されております。これは周波数を変えながら通信を行う機能で、一度敵が傍受に成功してもすぐに周波数が変わる為、完全な傍受や標定が困難になる機能が備わっています。また、無線機には妨害時の対妨害モードもあり、妨害に対して一定の対抗策ともなります。




  • 連接性


 近年制式化されている自衛隊の新しい無線機の多くにはシステムへの連接性が備わっています。例えば、新野外無線機にはGPSと接続して自分の位置を自動的に送信する機能といった携帯電話でもお馴染みの機能や、基幹連隊指揮統制システムへの連接機能も備える等、自衛隊のシステムの一部としての機能が付与されています。




  • 耐環境性


 戦場はもっぱら野外な上、寒冷な降雪地からイラクの砂漠まで自衛隊の無線機は使われます。降雨への防水機能や酷寒酷暑での稼働が求められる上、衝撃への耐性も求められます。その為、無線機は頑丈な箱型となっております。




  • 整備性


 仮に貴方の携帯が壊れたとします。それを携帯ショップに持っていったとしても、そこで修理されることなく工場送りにされて、戻ってくるのに最低でも数日はかかるでしょう。しかし、自衛隊の無線機は各機能毎に部品化されている為、故障原因の特定や交換が容易になっており、整備員や整備部隊での修理が可能となっております。





 ざっと述べただけでも、これくらいの機能が求められております。その他にも様々なものがありますが、キリがないのでこのへんで割愛させて頂きます。


 このように無線機一つとっても自衛隊と民生品に大きな違いがあり、まして携帯電話とは多くの点で異なっていることがお分かりになったと思います。貴方が携帯で通話する際、莫大なインフラを支えている人達がいることをたまには思い出して頂ければ幸いです(あっ、軍事のオチじゃねえ)。





<参考文献等>


竹田義行 監修「改訂版 ワイヤレス・ブロードバンド時代の電波/周波数教科書 (インプレス標準教科書シリーズ)」インプレスR&D


総務省電波利用ホームページ「無線局情報検索」


株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ「第18期 有価証券報告書」


「FOMAを支えるドコモタワーに潜入」IT media 2003年9月19日





2009年11月27日金曜日

事業仕分け人 金田康正 東大大学院教授のトンデモ認識



 先日から始まった行政刷新会議による事業仕分け。京速コンピュータ等の科学技術関連事業の見送り・縮小の評決が各方面から批判を受けておりますが、防衛関連でも自衛隊広報施設の予算削減、国際平和協力センター事業の廃止等厳しい評決が出ております。


 そんな中、本日は自衛官の実員増要求、備品、被服、銃器類・弾薬のコスト等の戦力の根幹に関わるものの仕訳も行われましたが、仕分け結果はどれも削減を求める悲惨なものでした。


 さて、この仕分け作業全体を通じて、様々なところで取り上げられる仕分け人達のズレた認識ですが、今回もかなり悪質な印象操作と同時にそれを露見させた方がいらっしゃいました。金田康正 東大大学院教授がその人です。ニコニコ生放送にて中継された金田教授の銃器・弾薬コストの仕分けにおける発言を録画してアップしましたので、以下の動画をご覧ください。






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 この金田教授、まず朝日新聞でのカラシニコフの記事を引き合いに出し、こう述べています。






 ガチガチに作っていないがために、例えば泥水に浸かったとしても水で洗えばね撃てるだとか、要するに有事に即した作り方をしているちゅうんですよ。そういう観点から、おそらく国産の場合は非常に綺麗に磨かなきゃダメだとか、どうせその~撃てばカスが溜まりますからその~かなりその~掃除しなきゃダメだということがあると思うんですが、そこらへんの観点で国産を選ばれていると思うのですが如何でしょうか。要するにカラシニコフみたいにほとんどメンテ、いや使ったことないから分かりませんけど、そういう観点、有事に即した形の銃器を選ばれているのかどうかちょっとお願いします。






 もう無茶苦茶な認識です。金田教授の言う朝日新聞のカラシニコフの記事というのは、松本任一氏が朝日新聞に連載した「カラシニコフ」のことを指すと思われますが、そもそもまともに「カラシニコフ」の連載を読んでいればこんな発言は出てきません。例えば「国産銃は綺麗にしなくちゃいけない」、「掃除しなきゃダメ」のあたりは、撃った後に銃の掃除をするのはどこの国も当たり前の話で、朝日新聞の「カラシニコフ?」にも米軍将校の話として「M16は優秀な自動小銃だが、掃除をきちんとしていなければならない」と述べています。発射薬の燃焼ガスが腐食の原因になる為、まともな軍隊では銃の掃除は必須です。掃除が必須な銃は有事に即していないとでも言いたいのでしょうか。第一、AK-47にだってクリーニングロッドは付いています。





 で、この質問に対し、防衛省担当者は89式小銃の部品点数が64式よりも少ないという形で考慮している旨を伝え、カラシニコフがどのくらい泥水に強いかまでは把握していないと伝えると、金田教授は以下の発言を行いました。






 いや、それは調べられた方が良いと思いますよ。






 なんかもう、カラシニコフの新聞記事すら読解することができない人が言えるセリフじゃないと思います。


 なお、カラシニコフについての誤認識はまだ続きます。この誤認識は事業仕分けの場において悪質な印象操作に等しいものです。






 インターネットで調べたら一丁30ドルから買えるというのもありましたからね。






 ソースはgoogleですかそうですか。


 これも金田教授自身が挙げた「カラシニコフ」の連載に価格は載っています。ロシアでのイズマッシュ社製AK-74の工場渡し価格は1丁120ドル、米軍がアフガニスタン国軍用に買ったルーマニア製AKは一丁250ドルです。銃価格の比較を行うなら、正規のルートでの価格を用いるべきで、崩壊国家からの流入品や密造品等が出回る闇市場での価格(闇市場でも30ドルは安すぎます。今のソマリアでは200ドルでも買えないとも「カラシニコフ」で出ています)を提示することは全くもって不適当であって、これを比較対象とすることは、自衛隊が闇市場より武器を調達しろと言っているのに等しいです。


 なお、補足までに言いますと、この120ドルと安価な価格でロシア政府にAKを供給しているイズマッシュ社は現在経営危機の最中にあります。


 今回の仕分けも相変わらず観ていて不快なものばかりでしたが、金田教授の誤った認識でずけずけと防衛官僚に「調べたほうがよい」と言える神経にはほとほと呆れました。





 最後に一つ。金田教授に出汁にされてしまった朝日新聞の「カラシニコフ」ですが、この連載自体はカラシニコフを軸にしたアフリカ等の紛争地域を描きだす傑作ルポです。ニコニコ生放送で「朝日新聞の~」と出てきたとき、一斉に批判的なコメントが流れていましたが、このルポは先入観を消してぜひ読んで頂きたいと思います。文庫化されて手ごろな価格で手に入りやすいのも○です。くれぐれも金田教授のようにならないように、真面目に読んでいってね!!!


 





※11/27追記:「仕分け」を「仕訳」と表記した個所がタイトルを含め多くありましたので修正致しました。





2009年11月12日木曜日

ニコニコ動画に在日米軍公式チャンネルオープン



 ニコニコ動画に在日米軍公式チャンネルが開設されました。





 在日米陸軍チャンネル


 http://ch.nicovideo.jp/channel/ch292


 
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 きちんと日本語字幕もあって、真面目に作っております。軍全体としての広報というより、日本での草の根活動に重きを向いているようで好感が持てます。「004. 米軍基地と日本の高校、フットボール試合で対戦」のジャパニーズイングリッシュっぷりはちょっと恥ずかしいけどご愛敬。


 陸上自衛隊もYoutubeにチャンネル持っていますが、国内企業のサービスであるニコニコ動画で在日米軍に先越されるのは好ましくないと思いますがどうでしょう。








 以下、Youtube内の自衛隊関連チャンネル


 陸上自衛隊 広報チャンネル


 防衛省補給支援活動 動画チャンネル





防衛技術シンポジウム2009 「中距離多目的誘導弾」



 昨日に続き、防衛技術シンポジウムにおける展示物の紹介です。


中距離多目的誘導弾


 中距離多目的誘導弾は79式対舟艇対戦車誘導弾と87式対戦車誘導弾双方の後継の誘導弾で、レーザーセミアクティブ・赤外線画像誘導の2つの誘導方式を採用しております。


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 中距離多目的誘導弾について、説明担当の方への質問とその回答を以下にまとめてみました。





質問「弾頭下部に突起がありますが、これはなんでしょうか?」



回答「この誘導弾は2つのシーカーを持っていますが、径内に2つを収めると制約が出る為に一つのシーカーを突起部にも納めています。この誘導弾は長距離に飛ばすことは目的にしていませんので、多少の空気抵抗の増加は無視できます。また、このような形の誘導弾を飛ばせることができるのも一つの技術です。」






質問「それぞれ別個にシーカーを積んでいるのですね。突起部のシーカーはなんでしょうか?」



回答「レーザーセミアクティブか赤外線画像誘導のどちらかです(微笑)」






質問「96式多目的誘導弾ではシステム全体が大規模なものになっておりました。中距離多目的誘導弾は搭載車両のみで射撃可能でしょうか?」



回答「96式多目的誘導弾のシステムが大きいものであるという声は我々も認識しておりました。中距離多目的誘導弾では1両で照準・射撃が可能です。」






質問「照準についてですが、赤外線画像誘導は撃ちっ放し性がありますが、レーザーは発射車両から照射するのでしょうか?」



回答「レーザーを照射するのは発射車両だけとは限りません。」



質問「87式中距離誘導弾の様に別個のレーザー照準でも照準可能ということですか?」



回答「はい、その通りです。」






質問「ネットワーク化も謳われていたとも伺っております。(注:後で気づきましたが、現在研究中の将来ネットワーク型多目的誘導弾システムと混同しておりました)」



回答「ネットワークという言葉自体はこの誘導弾のコンセプトにはありません。システム連接性という言葉で表現されています。ReCSへの連接による情報を得て、射撃が可能です。」









質問「79式対舟艇対戦車誘導弾の後継とのことですが、同じく79式の後継である96式多目的誘導弾との住み分けはあるのでしょうか?」



回答「96式多目的誘導弾は79式対舟艇対戦車誘導弾の後継ではありません。



質問「えっ、96式は79式の後継ではないのですか?」



回答「はい。96式は全く新しいカテゴリの装備になります。中距離多目的誘導弾が79式の後継となります。」






質問「失礼しました。では、79式対舟艇対戦車誘導弾と87式対戦車誘導弾双方の後継ということは、重MAT・中MATのカテゴリが統合されるということでしょうか。」



回答「はい、その通りです。双方共に時間も経過しておりますので、統合の上更新されます。」









 以上が主な質問とその回答となります。ご丁寧に答えて頂いたご担当者様、誠にありがとうございました。





2009年11月11日水曜日

防衛技術シンポジウム2009 「技本版偵察ソフトボール」



 年に1度、防衛省技術研究本部の研究成果を広く一般に紹介する防衛技術シンポジウムに今年も行って参りました。


 新戦車についての発表があった昨年、P-X・C-Xについての発表があった一昨年と比べ、単体の装備品で大きく注目されるものはありませんでしたが、新たな試みとして大学・工専での研究成果の発表がなされる等、産官学での将来技術研究を防衛技術に生かす事についてフォーカスが当てられています。そのことは、開会の辞における佐々木技術研究本部長も触れており、シンポジウムの副題「将来技術との融合を目指して」にはそのような意味合いも込められているとのことです。


 シンポジウムでの展示・発表につきまして、当ブログでは少しずつ紹介していこうと思います。





技本版偵察ソフトボール


 


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 昨年、「手投げ型情報収集ロボット」として紹介されていた偵察装置(以下写真)が、「携帯型小型情報収集器材」として継続して研究が行われているようです。


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 この装置は中心にカメラが固定されており、無線で操縦と映像の伝送を行えます。屋内や市街地での使用を想定しており、人が入れないところや死角を偵察する役割を持っています。


 上の写真は比較対象が無くて分かりづらいかと思いますが、今年展示されていたものは昨年より大分小さくなっており、重量も870グラムと1キロを切っております。


 動作デモの様子をニコニコにアップしましたのでご参考までご覧ください。昨年よりも若干凹凸に強くなっています。



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 使われている部品はほぼ汎用品で、操縦も無線LANを使用したものになります。昨年と違って、操作はジョグスティック状の物になり(昨年はプレイステーションライクなゲームパッド)、片手で操作可能となりました。


 今後の課題としては、投擲の衝撃に耐えることとのことでした。昨年お聞きした課題は手投げ可能にすることと記憶しておりますが、今年の実機は手投げ可能なレベルにまで小型化されており、昨年の課題はだいぶクリアしたとは言えるのではないでしょうか。





防衛技術シンポジウム2009 速報



 防衛省技術研究本部による防衛技術シンポジウム2009速報。取り急ぎ、写真のみ。


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 本文、映像等は後ほど。





2009年10月12日月曜日

下総基地開設50周年記念行事 ミニP-3C模擬戦



 取り急ぎアップ。


 
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 にしても、風と逆行がキツイですね。





2009年9月7日月曜日

DDH181「ひゅうが」に乗ってみたら、なんか色々あったの巻



 土曜日に横浜大桟橋で海自のヘリ搭載護衛艦「ひゅうが」を利用した防災訓練が行われ、その翌日は一般公開だったので乗ってきました。そしたら、広い甲板を利用して、色々出し物があったのですよ。もうどれも即興に近いノリなんですが、楽しかったのですよ。





 海上自衛隊ファッションショー in 護衛艦「ひゅうが」


 
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 乗員による海上自衛隊ファッションショー。拳銃装備の臨検隊員と思しき姿もあったりして、パフォーマンス以外でも見どころありました。








 護衛艦ひゅうが CIWS動作デモ


 
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 搭載されたCIWSの動作デモです。かなり機敏に動作可能であることが分かると思います。








 水上珍走団が護衛艦「ひゅうが」に接近してきた


 
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 あんま「ひゅうが」と関係ない動画ですが、ひゅうがに接近してきた水上スキーの集団を警察が追っ払った一部始終の動画。


 写真は後日。





2009年9月2日水曜日

追加:2009年度 富士総合火力演習(映像部)




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 総火演名物の同時弾着射撃富士山型です。今年はバックの富士山も映えて良かったですね。


更に追加。



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 今年は射距離500メートルにて、車の絵の中にある人型標的を撃ち抜きます。





2009年9月1日火曜日

2009年度 富士総合火力演習(映像部)



アップしたものから順次掲載します。



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2009年度 富士総合火力演習(写真のみ)



動画は編集中。撮影まるでできなかった去年と比べて多すぎて時間が……


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 朝の富士が奇麗な日でした。


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 富士をバックにOH-1。ピントが富士山に合っているのはご愛敬。


 


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 対人狙撃銃。今回は撮影位置が悪く、狙撃体制に入ると全然見えません。


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 戦場の強い味方、203mm自走榴弾砲。


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 朝焼けの74式戦車。


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 彼方に遊園地。色んな意味で面白い光景。


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 本日の新機軸とも言える87式自走高射機関砲。


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 初登場の小銃てき弾。青だから模擬?


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 その他、84ミリ無反動砲、110mm個人携帯対戦車弾。


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 会場を検査していたレトリバー犬。爆発物探知犬?


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 CH-47チヌーク。 


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 96式装輪装甲車。


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 低空飛行する敵ヘリを射撃、という想定なんだけども、どう見てもミートチョッパーです。ありがとうございました。


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 UH-60。誘導員の手が微妙な位置にあるのでシュール。


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 OH-1。相変わらず軽快な動き。


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 90式戦車。


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 浜田防衛大臣。って、選挙中によく来たもんだと驚く。


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 あっ、ヒゲの隊長こと佐藤議員。


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 AH-64D。相変わらずデケェ。


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 後ろから。排気口が印象的。